四畳半の空

むしの雑記ブログ

ぜんぜん憶えていません

自分の記憶力に、全くと言って良いほど自信がない。

特に人の顔と名前が特に憶えられない。

子供が通う保育園の保護者の顔などまったく憶えられなく、会話の中に「〇〇ちゃんのママ」と出てきても 、「誰???」となって、 冷や汗かきながら、場の空気を乱さない様にハイハイと適当に相槌を打っている。

どうしても思い出したくて記憶の糸を辿ってみても、そもそもその糸が頼りないものだから途中でプツリと切れてしまう。

あとは五里霧中、会話の闇の中に1人取り残される。

あ、そもそも○○ちゃんってどの子だろう?

 

職場でもそんな感じだから、お客さんの顔と名前を一致させるのに苦労する。

山田さんだったら「山」と「田んぼ」だから、麦わら帽子でおにぎりが大好き、とか連想ゲーム方式で憶えるようにしている。

ところが、その山田さんが実はサーフィンが趣味で、おまけに実家がパン屋さんだったらもうパニック。

麦わら帽子をかぶって波乗りするパン屋さんの絵は浮かぶけど…。

 

で、結局この人誰だっけ??

 

 

©2024 MuedShi

 

コクって何ですか?

かなりどうでも良いはなしですが、

わたしは「コク」という言葉の意味を理解しようと、もう長い間苦しんでいる人間のひとりです。

改めて説明するまでも無いと思いますが、人の舌は甘味、苦味、酸味、塩味、うま味の5つの味を感じ取るとされており、その中にコクと言う味は含まれていません。

にも関わらず、「コク」と言う謎の味は独り歩きし過ぎてはいないでしょうか。

コクって何ですか?

自分の作った料理にコクがどうやらこうやらとウンチクを言われた日には、「コクなんか入れてません」と背中で返したくなる。

それほど「コク」と言う言葉が好きではありません。

ただ、「嫌い」と言い切ってしまえないのは、この言葉の持つ響きの中に、他の5つの味覚が表現しきれない部分を包容するような、柔らかな優しさが含まれているからです。

この優しさにわたし自身が触れてしまった時、わたしはコクを好きになってしまいそうで恐い、だから敢えて貴方の事をこうやって「好きではない」と公言して自ら距離を置こうとしているのです。

わかって下さい、本当は貴方と仲良くしたいのです、本当はその胸の中に飛び込んでみたい。

でもわたしには出来ない。

もう後戻り出来なくなるのが、わかっているから...。

 

「さようなら」

そう呟きながら、わたしは「こくまろ」を鍋に放り込みました。

今夜はカレーです。

良いコク出てます。

 

 

©2024 MuedShi

ブロッコリー

ここから遠い場所で、沢山の人が亡くなったと聞いても涙が出ないのは、きっとわたしがその人たちの事を知らないからだろう。

同じ場所で、わたしの大好きな人が同じ運命に巡り合ってしまったとき、わたしはきっと大きな涙をこぼすだろう。

今日、地球の裏側で起こった悲惨なニュースを目の当たりにした。

ある本で読んだ、『私たちが「死」と呼ぶものには3種類あって、そのうちの1種類の死にしかわたしたちは悲しみを覚えない...』という一節を思い出した。

 

ところで、急に寒くなりましたね。

終わりなく続きそうだった夏が突然居なくなり、ろくな準備も出来ないまま10月の寒さに追い立てられた身体が風邪を引いてしまいました。

元を正せば、うちの子供達が貰って来た風邪のはずなのに、当の本人達はすっかり良くなって、「飯を作れ」「一緒に遊べ」と、わたしの弱った身体に鞭を打つのだから、堪ったもんじゃありません。

少しは労わっておくれよ、と言いたくもなりますが、先の悲しいニュースを見てしまうと、今日も元気に生きようとしてくれるわが子達の姿が、いつもより数倍愛おしく思えてしまうのです。

とは言え、無邪気を通り越した傍若無人さには腹が立つので、今夜のおかずは茹でたブロッコリーだけです。

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©2023 MuedShi

四畳半の空(ある画家の話)

生きる。

ただそれだけのことに酷く疲れる人が多い。

果たして私もその一人だろうか。

 

「人はなぜ生きるのか」

ボロアパートの四畳半の天井にへばりつく、名も知らぬ虫にそんな問答を繰り返している。

虫はわたしの声に聞き入るように、動かずじっとへばりついている。

「その解はとうに得ておる、我を見よ」とばかりに。

 

悩みとは、身体の輪郭をなぞるが如く、持ち主の大きさに比例して膨らむものだ。

だからこそ、虫や赤子は素直に生きていられる。

ならばわたしもあの虫のように暮らしてみようか。

 

では!と天井のランプにぶら下がってみたが、成長し過ぎた悩みの重さ、いや、身体の重さに耐えきれず、ボロアパートの天井は床へ崩れ落ちた。

 

「虚しい」

 

舞い上がるホコリはあざ笑う様に目の前で踊り続けている。

春の空は溶かすように、あの虫を連れ去っていく。

わたしも自由になりたい。

悩みなきあの空の向こうへ連れて行って欲しい。

 

 

©2024 MuedShi