隣の部屋の婆さんが、秋茄子を3本持って来た。
ナスは路地売りの物か、キズだらけで形も歪み、張りも無ければ色も悪い。
見た目はまるで婆さんそっくりだ。
しかし茎の切り口がみずみずしい、恐らく朝穫れの物だろう。
こないだの礼だと言っていたが、わざわざ今朝買いに行ってくれたのだろうか。
婆さんのその心が妙に嬉しい。
さて、こいつをどう食うかだが、
秋茄子は煮たり焼いたりするよりも、あっさりと漬物にするのが一番旨い。
見た目が悪いからと言って、それを隠す事はない。
隠したいものを隠そうとすると、わざとらしくなる。
わざとらしさを誤魔化そうとすると、不自然になる。
不自然さを取り繕うために、また手を加えねばならぬ。
己の尾を追う犬が如く、ぐるぐると回り続けるのならば、いっそ自ら尾を捨て去ってしまう方が良い。
という訳で、ナスはずぶりと糠床に埋めてやった。
糠床から顔を覗かせる姿が、益々あの婆さんそっくりだ。
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