四畳半の空

むしの雑記ブログ

A-02 秋茄子

隣の部屋の婆さんが、秋茄子を3本持って来た。

ナスは路地売りの物か、キズだらけで形も歪み、張りも無ければ色も悪い。

見た目はまるで婆さんそっくりだ。

しかし茎の切り口がみずみずしい、恐らく朝穫れの物だろう。

こないだの礼だと言っていたが、わざわざ今朝買いに行ってくれたのだろうか。

婆さんのその心が妙に嬉しい。

 

さて、こいつをどう食うかだが、

秋茄子は煮たり焼いたりするよりも、あっさりと漬物にするのが一番旨い。

見た目が悪いからと言って、それを隠す事はない。

隠したいものを隠そうとすると、わざとらしくなる。

わざとらしさを誤魔化そうとすると、不自然になる。

不自然さを取り繕うために、また手を加えねばならぬ。

己の尾を追う犬が如く、ぐるぐると回り続けるのならば、いっそ自ら尾を捨て去ってしまう方が良い。

 

という訳で、ナスはずぶりと糠床に埋めてやった。

糠床から顔を覗かせる姿が、益々あの婆さんそっくりだ。

 

 

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