四畳半の空

むしの雑記ブログ

ある画家の話

A-04 世渡り上手

一通りの買い物を済ませた後、書店に寄ってみることにした。 特に欲しい本があるわけではない。 店主には申し訳ないが、この前出展した展示会の総評を立ち読みしようと思っただけだ。 美術雑誌をパラパラとめくり、展示会の総評記事にだけ目を通す。 特別優…

A-03 譲れない一線

絵の道具を買いに街に出た。 とは言っても、私が使うのではない、週末に開いている児童絵画教室の子供たちに使わせる物だ。 当初は2、3人だった生徒も、決して多いとは言えないが、最近は少しずつ増えてきた。 恥ずかしながら、画家としての本業が芳しくない…

A-02 秋茄子

隣の部屋の婆さんが、秋茄子を3本持って来た。 ナスは路地売りの物か、キズだらけで形も歪み、張りも無ければ色も悪い。 見た目はまるで婆さんそっくりだ。 しかし茎の切り口がみずみずしい、恐らく朝穫れの物だろう。 こないだの礼だと言っていたが、わざわ…

A-01 四畳半の空

生きる。 ただそれだけのことに酷く疲れる人が多い。 果たして私もその一人だろうか。 人はなぜ生きるのか。 四畳半の天井にへばりつく名も知らぬ虫にそんな問答を繰り返している。 虫は何言も発さない。 おまけに此方に背中を向けつつ、細い足でポリポリと…